『吉良家の長男足るもの、誇り高く、強くありなさい。』


母上はよく、清く正しくあれと僕に言い聞かせて下さいました。
父上は、強く逞しく、将来家を任せるに値する男になるようにと僕を鍛えて下さいました。
今は亡き両親が健在であった幼き日、僕は父と母の期待に応えられるようになろうと、そう小さな胸中に誓っていたのです。

あぁ、父上。母上。
申し訳ありません。


「っん、ァ、あ……市丸、たい、ちょぅ…っ」

品も誇りも男らしさも何処へやら。
今の僕は敬愛する上官の下で安宅も色町の女のようにはしたなく嬌声を上げているのです。
どういう訳か、肉体の鍛錬を怠った覚えが無いにも関わらず、華奢な身体が酷く悔やまれます。
色に溺れている事もさながら、上官の、しかも同じ男によって身体を拓かれていると知られた日には、母上はきっと草葉の陰でさめざめと涙を流されるのでしょう。
父上に至っては、その陰から飛び出して僕を殴りつける事だと思います。
こんな有り様だからして、幼き日の誓いなど当の昔に色褪せている事が僕自身としても嘆かわしい事この上無いのです。
最早返す言葉もありません。

父上。母上。
大変申し訳無いのですが……。


「イヅルは、可愛らしなァ」


「はっ、ぁ…ン、ぁあっ」


「好きや。愛しとるよ」


「た、隊、長……っ。ぼく、も…、ぼくも…っ」


僕に愛を囁く、ロクデナシ、人でなしと専ら評判のこの男を。
僕自身も敬愛の域を超えて慕っていると知ったら、父上らはお気を確かに持っていられるでしょうか……。


「僕も…、お慕い申しております……っ」


「……なんや、そんな堅苦しい言い方しよって。素直に『市丸隊長、大好きです。愛してます』言い」


「ァっ……そ、なに…ひぁ、恐れお、い…です、ぅ、んんっ」


「うん。じゃぁ今日はイヅルがもっと大胆になれるよう練習や。
『市丸隊長、大好きです、愛してます。隊長の為なら×××から×××××な事までイヅルは出来ちゃいます』て言ってみよか。言うまで今日は寝かせへん」


(……あぁ。きっと、二人とも気絶するな……)


吉良家の長男の憂鬱など何処吹く風、愛の営みは夜が白むまで続けられるのでした。

………

市丸は絶対イヅの両親に気に入られないだろーなと思って。
「×××」の部分はイヅルにさせたい事を自由にレッツ脳内補完。

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