(注)
・一応現代パロディ
・イヅルがおにゃのこ
・しかも身篭ってる
・市丸がアレな人
・精神的にアーッ(^p^)
・あまり気分の良くない表現

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

泣きながら、イヅルは言った。
もうあの人が居ないのが信じられないのだと。
嘆きながら、イヅルは言った。
どうしてあの人は逝ってしまったのかと。

泣きながら、嘆きながら、イヅルは微笑んだ。
それでも、あの人は残していってくれたのだと。

歓喜に満ち溢れていたボクの中に、ひやりと冷たいものが走った。
何を、と問うた声は少しだけ震えていた。
涙の名残を残した目を細めて、微かに幸せそうな表情を浮かべたイヅルに、多分、ボクは怯えた。
イヅルの細い指が、そっと、その腹に添えられた。

こどもが。
あのひとのこどもが。
ここに。

慈しむように、命の宿る場所を撫でる。
その姿は酷薄な迄に美しい。
まるで、聖母のように。

一目見て、恋をした。
あの青い瞳がボクを映して、ふわりと微笑みかけた瞬間。
理性も本能もボクを構成する全てがイヅルを愛おしむ事を決めた。
理由も理解さえもなかった。
訳も無く、ただただ泣きたいほどに狂おしい。
愛してる。
愛してる。
愛してる。
イヅル、なぁ、愛してる。
隣接した、壁一枚隔てたそこで、ボクは何時もイヅルを想っていた。

やっと誰のものでもなくなった筈のイヅル。
これからボクのものになる筈のイヅル。
おとこが死んだから。
おとこは死んだ。
死んだ。
死んだのだ。

死んだ、のに?

「身篭っとるんか……?」

「ええ」

あのひとと、僕のこども

イヅルが呟いた。
それは何度もボクの頭蓋の中で反芻されて、ガンガンと打ち鳴らすように響かされた。
まるで悪い夢を見ているように、足元から崩れていく心地がした。
眩暈がする。
今、たった今、ボクはこの腕にイヅルを抱いているというのに、イヅルは未だボクのものにはならない。
最初からイヅルはおとこのものだった。
そして最後までイヅルは。


(あかんわ、そんなん)

する、と柔らかな下腹に手を伸ばした。

「市丸さん?」

「此処に、イヅルの子ぉがおるんやね」

軽く爪を食い込ませるようにすると、指の分だけ衣服が寄せられ、沈んだ。
未だ何の膨らみも無いそこは、温かく柔らかい肉が付いるだけ。
僅かに指に込める力が増した。
今は形にも成っていない小さな、しかし、この奥で確かに命を孕んでいる其れ。
やがて胎盤に繋がれた、未完成な生き物になっていくのだろう。
そして羊水に揺られながら、血に塗れて生まれ落ちるのを待っている。
気持ちが悪いと思った。
これはイヅルをおとこに縛り付けるだけの存在だ。
屍となったおとこの、イヅルへの執着だ。
身体を引きずり、腐りかけたその手がイヅルの脚を掴む。
腹の奥から、赤子がイヅルを蝕んでいく。

なんて悍ましい。
嗤ったその口から今にも吐きそうなぐらいには。

「元気な子ぉだとええなあ」

イヅルを抱きしめる。

(祟り子だ、忌み子だ、呪い子だ)

(在るべきではない)
(居るべきではない)

心の中で呪う。

(死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死んでしまえ)
(お前を孕ませたおとこのように)

優しい声で囁く。

「きっとええ子に育つわ」

優しい顔をする。
心の中で吐き捨てる。

(汚らわしい汚らわしい)

指の力が増す。
腹の中で恨む。

(イヅルが汚れてしまう)
(今今すぐにでも取り出さなければその柔らかな腹を裂いて垣間見える肉を掻き分け探り当てたその先の最奥に潜む体液に塗れたそれを臍の緒も血管も引きちぎって生を受けるその前にこの世に引きずり出すのだ)

優しい仕草で労る。
頭の中で殺す。
イヅルを抱きしめる。

指の力が、増す。

(そうして産み落とした胎児はどうしてやろうおとこへのみせしめにバラバラに解体して切り刻んでやろうかそれともそれこそ原型を無くすまでグチャグチャに踏み潰して)
(それともそれともそれともそれともそれとも、)

 

「怖いんです。怖くて怖くて仕方が無いんです」

気付けば、細い肢体はかたかたと小刻みに震えていた。

「あのひとが逝ってしまって、一人で僕はどうすればいいのか判らない」

怯えた風なイヅルの声が、ボクの耳に蕩けるように甘かった。
全身の血の巡りが逸っていく。

「この子がいるのに、守れるかすら判らない」

零れる涙を拭いもせずに、内に湧き出す心情を吐露してしまうイヅル。
崩れていく。
不安定に、怯えて、惑う。
かつてはあんなに幸せそうに笑っていたのが嘘のように、悲しみに満ちている。
おとこが死んだらこうも容易く崩れていく。
ボクの手で変わっていくイヅルの表情が素直に嬉しい。

「大丈夫やよ」

高揚していく気分を抑えられない。

「怖がる心配なんて、何処にもあらへん。イヅルはひとりやないよ」

「……ちまるさん」

「ボクがおる」

「でも、でも……」

「何の心配もせんでええ。ボクが守ったげる」

ぎゅっと強く腕の中のイヅルを抱き寄せた。
きっとおとこがそうしたように、愛おしんでイヅルを抱きしめた。
イヅルは戸惑いの色を浮かべた目をしばたたかせて、息を詰めた。
なんで、と吐息のような囁きが聞こえた気がして、思わず口角が吊り上がった。
胸のイヅルは何も、見えていない。

(そう、イヅルはボクが守ってあげる。イヅルに近付くもん全部から守ってあげる。おとこも消した。その腹の中身もなんとかしたげる。ボク以外何も要らんわ)

やっと、手に入る。

「市、丸さん……僕、」

「ふふ、もう安心や」


絶対に逃がしてなんかやらない。

 

…………
うっわあな現代パロです。(一応)

非常に分かりにくい設定。
→隣人市丸と未亡人イヅル。
アバートの隣部屋に引っ越してきたイヅルに一目惚れした市丸。
だがイヅル既に既婚者。
どうしようもなくやきもきしてた市丸。
で我慢の限界。多分あんまり我慢する気無かったろうけど。

取り敢えず精神的にアーッ(^p^)な市丸が書きたかっただけなんです。←←←←←
お粗末なものを送り付けてすみませんorz
アレだったら何度でも書き直します、(__;;)
リクエストに添えてなかったら別な文も書きますので!

とにもかくにも、相互有難うございます!!!
本気で大好きですあぁあryry


今後ともどうぞ宜しく願いますv←←

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