くちとくちがくっついた。
むに、とやわらかくて、あたたかい。
ほそいけど、やわらかなからだがぴくりとうごいた。
大人しくとじられたまつげがふるえて、その長さに一しゅん気をとられる。
 
「……くち、あけて。」
 
ほとんどいきみたいなこえがとどくきょりだ。
すこしとまどって、それからすなおにくちがあけられた。
きれいなならびのはと赤いものがのぞく。
少しきんちょうしながらそのくちにかみついた。
じぶんい外のくちの中は、なんだかへんなかんじがした。
ざらざらしてるけど、すごくやわらかくてぬるぬるする。
ぼくのがいづるのをなぞった。
それもだけど、中全体が思ったよりあつくておどろいた。
二人ぶんのだえきがからまる。
じわり、とどことなくあまかった。
まざるとぐちゅぐちゅって音がきこえて、

「ん、ぅ……。」

耳から入ってくると、あたまの中がとろとろにとけてゆく、ようなかんかく。
なにかににているなぁ、とか少し考えながらしたをなめる。
ねもとまでなめたところで、くるしそうなこえが聞こえて、とんとんとむねをたたかれた。

「あ、ごめんなぁ。」

くちをはなすと、いづるはぷはっといきをついた。

「どうやった?」

「よく、わかんないです……。」

「はじめてやから、しゃあないよ。」

「ごめんなさい。」

「ああ、ちゃうよ。ボクもおんなしやし。」

よしよしとあたまをなでてやったけど、いづるはもうしわけなさそうにめをふせる。
なんでもじぶんがわるいと思ってしまうのが、おとうとのくせだった。
ボクにはないところなので、すこしはイヅルをみならいなさいとおかあさんにいわれる。
おにいちゃんなのに。

「でも、」

「ん?」

うつむいたいづるが、きゅっとシャツのすそをにぎりしめた。
しばらくあ、とか、う、とかがきこえた。
なかなかうまくことばにできないらしい。

「その、えと……ぐるぐるするっていうか、めがぼうってして、あつくて。」

「かぜでもひいたん?ねつとかないか、イヅル。」

あ、といづるがかおを上げる。

「それです。かぜをひいてねているときににていました。」

「……ああ。」

ふわふわ、どろどろ、くらくら。
じわりとあつくて、そのままやわらかいところにしずんでく。
にじむようにからだから何かがとけて、ながれだして。
めがかすんで、色んなものがあふれて、何にも考えられない。

それはおたがいのしたをからめ合うときとおんなじで、
きらいじゃなかった。

「ちゅうってこんなんなんやな。」

あたまあつうなって、しんぞうもどきどきするんやね。
ぼくのむねはまだばくばくいってる。

「イヅルはだいじょうぶか?」

「えと、ちょっといきがくるしい、きがします。でもっ、だいじょぶです。」

「ほんまにだいじょぶか?むりしたらあかんよ?」

うなづくいづるにぼくはくすりとわらった。
いづるはかたをちぢめて、はずかしそうにうつむいた。

「だいじょぶ、ですから、もういっかい……。」

「いづるはこーきしんおうせいやね。」
 
 

 
 
「でもほんま、べろって何のあじなんやろな。」
 
………………
しょた×しょたでしかも兄弟ぱられるです。
小学校低学年と幼稚園年中組ぐらいかなぁ。
容姿や言葉遣いの違いは、養子とか腹違いとかそういう感じです多分。
色々な自覚無しでいちゃこらしてるのって可愛いよね。
このあと買い物から帰ってきたままんは衝撃の現場に遭遇します。(笑)

20110109.
inserted by FC2 system