人の世から魂たちが移りゆく死人の地。
その地こそが人の世の天上にして、魂魄の到達地点。
死して昇る、天上の地。
昇りてたゆたう魂は再び巡るべく時を待つ。
やがて転生輪廻の宿命を背負い、須く人の世へと生まれ落ちるのだ。

ひとの魂は死して天上へと昇り、死神はその地に生きる。
ならばその死神が死を迎えたとき

「お前は一体、何処へ逝くんやろね」

死を司る神は、天上から更なる空へと昇るのか。

「いいえ、何処にも逝けはしないのです」

自分は、この地で生まれた死神だ。
天上で生まれた死神は昇った事もなければ、巡った事もない。
生まれ落ちた刹那から、此処で生き、死に、消え逝くが定め。
出生に意思は無く、転生に価値は無く、輪廻に選択は無い。

喩え、
世界の全てを彼の人が置き去りにして行ったとしても

自分は此処にいるから何処にも行けない。

僕は地上。
貴方は空。

笑える程に堕落仕切った貴方のくせに、堕ちもせず天に立つとは何とひどい冗談か。

矛盾だろう。
愚昧だろう。
残忍だろう。
横暴だろう。
冒涜だろう。

而して、真理なのだ。

埋まらない距離に喘ぐ。
貴方のいない世界で、呼吸と云う行為に徹している。

泣いたって喚いたって変わらない其れこそが現実。
 

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